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複素数

 

フーリエ変換や図形の回転を語る上で複素数を欠かすことはできません
画像がうpできないので自分で複素数平面を書きましょう。
それから、ここの内容は高等教育での数IA IIB程度は理解できてる前提ですから、注意。三角関数二次関数(それ以上)等々

複素数の意義

複素数はその本質をベクトルと同じくする。異なる点は、複素数は「数式」として計算できる点。ベクトルは成分の値を列挙するが、複素数では「数」に色がつき、係数計算で事を為す。すなはち「数単位」による区別である(註:ベクトルもまた単位ベクトル表記ができるので、比較して欲しい)。

虚数単位の前に実数単位を考えてみよう。実数単位を n とすると、80 の大きさを持つ実数は、80n と表す事ができるんだ。こういう考え方は「原子質量単位」と「原子量」の関係に近い。ただ、一般に実数単位は 1 とされるので、ここでは n = 1 として以後の計算をする。

更に数を分析してゆくと、数単位は 2 の冪数だけ与えることができることが知られてる(ハミルトンにより四元数が発見され、三元数の無理性が示された)けど、今は知らなくてもよろしい(積の関係を構成するための制約)。

ただこう考えてみると、ベクトルより制限事項は多い。しかし平面を考察する上では、十分な威力を発揮する。

虚数単位

実数の世界においては負の数の平方根というのはありません。
そこで-1の平方根(&mimetex(\sqrt{-1});)をi(電気系の人はj)とし、これを虚数単位と呼びます。
複素数は実数と虚数単位iの実数倍の和で表されます。特に実数部が0のものを純虚数と呼びます。

また複素数を一般的に&mimetex(a+bi);と書きます。この場合

それから共軛(共役)複素数てのがあり、「軛(くびき)を共にする」則ち「束縛関係」にある複素数だ。字面はむつかしいけれど、実体は簡単で、&mimetex(a+bi);と&mimetex(a-bi);な複素数を共軛であると呼ぶ(註:常用漢字云々で一般の教科書では「共役」の漢字しか見ないけど、混乱しないこと)。虚数部の正負が反転してる関係とも云える。

何故これをこう呼ぶかといえば、複素数の単純な足し算掛け算をすればわかるけれど、「(a+bi)+(a-bi)=2a」「(a+bi)(a-bi)=a^2+b^2」であり虚数が消失するとか、因数分解するとちょろちょろ出てくるとか、割と「共軛な複素数」には不思議な関係があるんだ。

それから、1の3乗根、x^3-1=0の解を思いだして欲しい。これは虚数単位の応用にもなって居る。ω(オメガ)で表すこの解は幾つかの特性を持って居る。これを知ってるとすこしだけ虚数単位計算が早くなります。「1のn乗根」も参照。また、この虚数解は「共軛である」ので確かめて欲しい。

複素数の四則演算

加算減算は実数同士虚数同士で行います。

#mimetex(\left( a+b\mathit{i} \right) + \left( c+d\mathit{i} \right) = \left( a+c \right) + \left( b+d \right)\mathit{i});

#mimetex(\left( a+b\mathit{i} \right) - \left( c+d\mathit{i} \right) = \left( a-c \right) + \left( b-d \right)\mathit{i});

掛算は普通に展開しましょう。iの2乗は-1ということを忘れないように。

#mimetex(\left( a+b\mathit{i} \right)\left( c+d\mathit{i} \right) = \left( ac-bd \right) + \left( ad+bc \right)\mathit{i});

乗除算が複雑に見えるかもしれませんが、要はiの2乗は-1というルールの下普通に計算すれば良いのです。

#mimetex(\frac{ a+b\mathit{i} }{ c+d\mathit{i} } = \frac{ \left( ac+bd \right) + \left( -ad+bc \right)\mathit{i} }{c^2 + d^2});

複素数に大小の概念は無い

唐突ですが複素数は大小が語れません!
-1より0が大きく、0よりπが大きい、πより22/7が大きく・・・・・・と、こんな具合に大小が決められるのが実数です
ところが虚数は実数軸上には存在しません
ですから、1+2i と 3+4i を比べてどちらが大きいか?なんて語ることはできないのです

複素数平面

では実数を実数軸上に載せるように複素数を表現したいとしたらどのように表現すれば良いのでしょうか?
答えは簡単、軸をもう1つ用意してやればいいのです

横軸を実数軸、縦軸を虚数軸と呼びます。Re, Imと表記することが多いです。この平面の座標として複素数を表します

実はこの複素数平面こそが複素数の最も強い部分であり、複素数の理解を深めるポイントなのです!
むしろ複素数平面のために複素数が生まれたんじゃないだろかとすら思う

座標平面とはそもそも何ぞや

普段我々がつかう座標平面にはそれぞれ名前があり、平成二一年度から復活するらしい複素数平面もその一つだ。

「座標」とは coordinate の訳で、日本語ではこれを「服装をコーディネートする」とかいうけど、このcoordinateだ。訳語は「座ってる場所の指標」程度の感じ。

「数直線」を中学の数学か初等教育でならうけど、数直線は座標を一次元(直線)に並べた(連続して配置)したものなんだ。

「座標平面」とは様々な位置が連続してる場所だ。「数直線」が直線であるのに対し、「座標平面」は「平面」、二次元に展開する。

ベクトルや方程式では、ある変数を与えれば全てを表すことができる。ベクトルで直線を表すには一つの単位ベクトルを、平面を表すには二つの単位ベクトルを与えればよい。平面でも同じことがいえる。

数直線には一つの直線を与えた。「座標平面」では二つの直線を与えるんだ。「二つの直線」を直交させる座標系を「直交座標系」と呼び、複素数平面もxy平面も直交座標である。

二つの直線と言ったけれど、実際には二つの要素であり、喩えば極座標系では直線ではない。極座標は三角函数でちょろっとでてくるけど、一つの「長さ」と「角度」がこれを決定する。複素数平面の学習にあたってはこの極座標に就いても学習して欲しい。座標の「廻転」はこの極座標を理解してないと理解が進まない。

デカルト座標(直交座標系)

フランスの偉大な数学者(哲学者)ルネ・デカルトにより、1637年の著作「方法序説(Discours de la méthode pour bien conduire sa raison, et chercher la vérité dans les sciences)」で発表された座標系で、平面で座標を扱う方法を確立した彼の名を取り、デカルト座標と呼ぶ。

要するにxy平面のこと。複素数平面はこれを応用した物なんだ。二つの変数(xとf(x)とかでもいい)があり、これを座標軸として据ゑる。据ゑた座標軸の座標が、平面での点を・・・てのは中学の数学からお馴染み。言葉より実際の使用法でよくわかってると思うから省略。

座標軸がくぎる平面を、事象と呼び、xy平面では次の通り。

この数字には意味があって、極座標系での「角度」が0から2πへと増えてゆくに従い通過する「事象」を示してるんだ。次に極座標系を見てみよう。

極座標系

ここでは純粹に「圓座標」のみを扱う。圓座標をやれば、デカルト座標で「そういえばxyz空間があるなあ」とか思うように、「球にも応用できるね」とか考へるだろうけど、今は無視して欲しい。

空間の話をしたので、少し根本的なことを書く。これらの座標系で扱えるのはユークリッド空間である。ユークリッドは「ユークリッドの互除法」などあるけれど、「ユークリッド幾何学」を「原論(Στοιχεία)」にて著した古代ギリシアの哲学者エウクレイデスの事だ。幾何学には色々種類があるけれど、初等中等高等を通して一貫して「ユークリッド幾何学」のみ扱うのは、それだけこの幾何学が重要だからであり、座標系もまたこの幾何学特性を考察するだけに終始することになる。アインシュタインが相対性理論を完成させるにあたり、リーマン幾何学を利用したらしいけれど、こういった現代数学の極地でない限り他の幾何学は出てこないから安心して欲しい。

要するに今は立体(更に厳密には曲面)を無視しろということ。

さて極座標系の「圓座標」では偏角(角度)と動径(長さ)を定義する。長さは原点(中心)からの距離であり、角度も原点からの物だ。高等教育では、物理での角速度、数学での角速度(微分)や三角函数でこの座標平面を見ることがある。偏角と動径は一般にθとrで、座標は(r,θ)と表す。rは半径でよく使うし、θも角度としてはお馴染み。r=1のときには「単位圓」を描くと呼ぶ。

圓座標では、デカルト座標への変換ができるんだ(例外もある)。それは次の通り。

この式をみて、三角函数の公式が證明できると気付いた君はえらい。ふむ、r=1のときにx=cosθ、y=sinθを代入すると、1=sin^2θ+cos^2θが導けるね。

複素数では、次の応用で極座標とします。

極座標の強みは廻転にあり、(r,θ)をφだけ廻転させるならば、(r,θ+φ)とすれば良いんだ。更に、この廻転をデカルト座標へうつす(写像)ことがもっと重要なんだ。先程デカルト座標への変換を示した。條件をみたせば変換できてしまう。更にこの式は「複素数平面の廻転」でも似た形で出てくる。行列の廻転でも使用できるし、最終的には線形代数の世界となる。

幾何学傍論

ユークリッド幾何学とリーマン幾何学の違いは空間の扱いにあるんだ。ユークリッドはギリシア人だとは述べたけれど、一方でリーマンとはベルンハルト・リーマン(Georg Friedrich Bernhard Riemann) のことで、19世紀のドイツ人数学者だ。彼はなかなかに先駆的であまり理解されなかった不遇の人。リーマン幾何学とは彼が完成させた「微分幾何学」のことで「解析学」の類い(微分解析とか聞くだろう)。変ってユークリッド幾何学は「総合幾何学」の類いなんだ。

ユークリッド幾何学が古典幾何学と呼ばれるように、ユークリッド幾何学では現代数学が考察する段階で重要になってくる点に言及してはなかった。楕円幾何学や楕円方程式の誕生、天体観測からの「要請」によりユークリッド幾何学は破綻をきたしはじめた。

そもそも数学とは、まづ公理ありきで始まる。公理とは絶対に證明できないけれど絶対に正しいとされることで、幾つかの公理から、定理や公式が導かれ、命題を證明する。「光速は秒速三〇萬キロ」「平行な直線は直交しない」「三角形の内角の和は180度」などは公理である。なおこの単純な公理から無数の定理を作り間接的に命題を證明することを批判したのがヘーゲルだったりするけど、これはまた別の話(疑問には思っておいてほしい)。

「数学では矛盾が存在しない」ことが前提であるから、仮定された公理が正しいとして、それを元に導かれた定理は、「公理が正しい」限りに於いて、定理もまた正しい。これは「数学の完全性」により保證される(論理学に於ける歸納と演繹の考え)。勿論、単純な系統ではこれが正しいのだけれど、二〇世紀になり「数学基礎論」に於て「不完全性定理」が示されたことにより、数学の完全性が否定されるという大事件が起きた。数学は矛盾する学問になってしまったのだ。これを示した数学者クルト・ゲーデル(Kurt Gödel)の名より「ゲーテルの不完全性定理(Gödelsche Unvollständigkeitssatz)」と呼ぶ。まあでもこの矛盾は「クレタ人の嘘」とかの「自己言及矛盾」の類いであって、あまり気にしなくても良いのではないかね。

さてユークリッド幾何学での公理はリーマン幾何学では通用しない。これは「非ユークリッド幾何学」系統(楕円幾何学)では当然なんだけど、リーマンも当然これを蹈襲した(斯くいう彼は楕円幾何学を球面幾何学に拡張した張本人)。

「平行な直線は直交しない」。成る程、慥かに。けれど地球儀をみてほしい。緯線と経線は共に平行な直線のあつまりだが、経線は極で交叉する。ここにユークリッド幾何学での「平行な直線は直交しない」ことが「曲面(球面)」では成立しないことがわかる。同様に「三角形の内角の和」は球面に書いた三角形の内角をみれば、ユークリッド幾何学の公理は破綻するんだ。

リーマン幾何学では曲率を考慮する。曲率を考慮して始めて見えて来た次元が、新たな公理だった。

数学基礎論

数学基礎論はプログラミングに応用できる数学の理論だ。先程の「ゲーテルの不完全性定理」、「数学の完全性」、「公理」といったことは、数学基礎論で論じられる。数学の骨骼とでもいうか、フレームとでもいうか、函数などの概念はここで定義される。

f(x)=yがあって、x=2のときのみf(x)=yではない、なんてのがあると困るだろ? ちゃんとf(x)=yになるように足場を固めるのが数学基礎論なのだ。計算にしても矛盾が無いようにするには「足し算より掛け算優先」になったりする。かくも結果としていろんな副産物(聚合論・證明論・計算理論など)ができたけれど、どれもむつかしいから習うなら頑張って呉れ。

数学基礎論は、ガウス曰く「数学は科学の女王であり、数論は数学の女王である」の「数論」と共に、数学に於ける重要な位置を占める。天才フェルマーもまた数論が好きだったとか。数論は単純な命題のくせに、その證明は鬼のようにむつかしいという惡魔の学問。「素数とそうではない数の内、素数が多いは真である(または偽、またはどっちが多いか)」などの命題が数論だね。暗号で重要になってくるから、数論も好きになっておいて欲しい。

歸納法と演繹法

歸納法は公理(仮定された命題)を證明し、演繹法は論理から結論得る手段である。量子力學の理論はその殆どが「観測」を経ず歸納法で示される好例であり、「命題を仮定すること」がどういうことかよくわかる。宇宙に関する情報は一年もすれば、ああアレはウソだったんよ、とコロコロかわるのは此処に問題がある。

歸納法については、公理を平行線について述べたので、示せば、平行線は幾ら長さをとっても同じだし交わらないので、これを歸納的に正しいと呼ぶ。命題を矛盾させない限りにおいて、命題は正しい。

演繹法は、今ここにある論理(前提條件)があるとする。重力加速度と物体の落下速度の関係、という力学の基礎から示すなら、実際に実験しなくても我々は落下速度を計算して予測することができる。これを演繹法と呼び、論理が正しい限りに於いて演繹法は必ず正しい。

歸納法を更に「この世には男しか存在しない」という命題を仮定して考える。町にでて「女」をみればこれは否定される。一方で「女」から隔離すれば、この命題は隔離された者からみて絶対的に正しいものとなる。歸納法では、その仮定で矛盾をきたさない限りその命題が正しいと言い張ることができる、是が重要なのである。たとえば自然科学では、観測結果から歸納法を用いて法則化することが殆どである(観測に基づくので量子力學よりは確実性が高い)。なおこの命題を、「ドラゴンボールの孫悟空」にあてはめれば、彼は物語の初期に於いて「女」を知らなかった。よって「ブルマ」と出会うまでは彼に取ってこの命題は正しいのである。

数学はこの論理(人の考え出した論理學)が正しいことが前提になっている。詰まり歸納法が上手く機能することで「数学の完全性」が保證される。高校で習う「數學的歸納法」はこの考えの拡張。

プログラミングでも、論理を扱う限り、この論理は重要。

絶対値と複素数平面

複素数の絶対値は実数部の自乗と虚数部の自乗の和の平方根と定義されています
何故このように定義されているかは複素数平面を見れば非常に分かり易いです

つまり原点からの距離が絶対値な訳です

1のn乗根と複素数平面

1のn乗根と複素数平面、何の関係があるか分かりますか?とりあえず1の3乗根を求めてみましょう

&mimetex(\begin{eqnarray*}x^3-1 & = & 0 \\ (x-1)(x^2+x+1) & = & 0 \\ x & = & 1,\frac{-1\pm\sqrt{3}\mathit{i}}{2}\end{eqnarray*});

この複素数を複素数平面上に載せてみましょう

何か気がつきませんか?そう、ちょうど単位円(半径1の円)を3分割しているのです!
余裕があるひとは他のnに関しても試してみましょう。ちゃんとn分割されるはずです。何故かは次の項にて明らかに

複素数の掛算と複素数平面

複素数z=a+biとw=c+diを掛けるとzw=(ac-bd)+(ad+bc)iになりますね?
仮にこのzとwが単位円上に乗ってるとしましょう。

&mimetex(\begin{eqnarray*}z&=\cos \theta + i \sin \theta \\ w&=\cos \phi + i \sin \phi \end{eqnarray*});

aはcosΘ, bはsinΘ, cはcosΦ, dはsinΦとなっていることにお気付きでしょうか?これを用いてzwを表すと

&mimetex(\begin{eqnarray*} zw&=&(\cos \theta \cos \phi - sin \theta \sin \phi) + (\cos \theta \sin \phi + \sin \theta \cos \phi)i \\ &=& \cos(\theta + \phi) + \sin(\theta + \phi)i \end{eqnarray*});

となります。つまり掛算は回転を意味する!
ちなみに単位円上に無い場合はさらに両者の絶対値をかけてやる必要があります

オイラーの定理

オイラーの定理というものがあります。

&mimetex( e^{i\theta} = cos \theta + i sin \theta);

証明や説明は、テイラー展開とか出てきてかえって複雑なので省略。
これを使うと何が良いか?なんとΘを変えることで単位円上の任意の点を表すことができるのです!掛算も簡単でしょう?単位円上からずらしたい場合は絶対値の分をかけてやればOK。

&mimetex(re^{i\theta});

プログラミングにおいて複素数が一番役立つのは回転、試しに複素数を使わないでxy平面での回転を計算してみよう。いかに複素数が素晴らしいか分かるはず。

ノート:複素解析において、z=re^iθ(r は定数)とおくと、dz=izdθになる。このことは円周の積分でよく置換積分のために使われる。


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Last-modified: 2023-02-23 (木) 23:33:34