数学 > 解析学(analysis)
微分や積分は解析学と称されます。旧課程の教科書では「数学一・基礎解析・代数幾何・確率統計・微分積分」と分かれていたのですが、新課程の現在ではこれを適当に纏めてあります。このうち基礎解析とは、多くの函数や方程式、微分や積分を扱う分野(というか微分積分の前に履修するべき分野)でした。
なぜ微分や積分は解析学と呼称されるのでしょう。この分野では、多く、ニュートンやライプニッツの業績が讃えられます。従ってその解析対象は、まさしく、自然科学を解析するために生まれたのです。現在では函数自体を解析するなんてこともありますが、そもそも解析学とは、変化する量がどのように変化しているのかを考えるためにあるのです。
なおこの微分・積分の発見、どうも時代的必然であったようです。幾らかの発見に概して云えることかもしれないけど、人類が条件を満たしたとでもいいましょうか、ほぼ同時期に違う学者が発見してるんですね。現代数学の系譜であるニュートンやライプニッツに埋もれた、関孝和とかを忘れないであげてほしい。
第一に種々の函数の取扱い方。線函数、抛物線函数、橢円函数、双曲線函数、円函数、指数・対数函数、と高校レベルであっても数多い函数を取扱うが、どれひとつ欠けてはならない。
次に極限の性質。&mimetex(\lim_{\theta \to 0 } \frac{\sin\theta}{\theta} = 1); とかは、常識であると認識せねばならない。
更にまた、&mimetex(\lim_{\theta \to 0 } \frac{\sin 2\theta}{\theta} = 2\lim_{2\theta \to 0 } \frac{\sin 2\theta}{2\theta} = 2); のように変形するといった事も、忘れてはならない。
#mimetex(\lim_{h \to \infty} (1+\frac{1}{h})^h = e\\ \lim_{\theta \to 0 } \frac{\sin\theta}{\theta} = 1);
知識として憶えるべき数値は、上二つ。後は「発散」「収束」条件の理解と「中間値の定理」の理解をしてください。
微分とは読んで字のごとく、細分化する作業。解析学について述べた「変化する量がどのように変化しているのか」ってのがポイント。
抛物線は一様な変化をしないため、よく例題として取り上げられます。ここでも例によって、&mimetex(y=x^2); のグラフPを眺めながら微分法を考えます。
x | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||||||
y | 0 | 1 | 4 | 9 | 16 | 25 | ||||||
Δy/Δx | - | 1 | 3 | 5 | 7 | 9 | - |
物理を初めて習った時、実験データの解析(移動距離と速度)で図を書かされた事を思い出して、上の増減表を用意してみました。変数 y を変数 x で解析してみましょう。なおΔ(delta) はdifference「差」を意味します。
変数 x が同じ値(ここではΔx = 1)だけ変化した時、変数 y はどのように変化しているでしょうか。それを列挙してみたのが Δy/Δx = Δy の部分です。どうにも等差数列になっていて、どこかしら規則性があるように思えます。
次に変数 x の変化量を Δx と置き、y の 変化量 Δy とその平均変化量を考えます。上の図では、平均変化量を「Δy/Δx」と表記しました。Δx=1 で解析していたので、平均変化量 Δy/Δx は y の変化量 Δy に等しいとしても良かったのですね。
x→x+Δx の時 &mimetex(y+\Delta y=(x+\Delta x)^2); ですから、Δy の値は、&mimetex(\Delta y=(x+\Delta x)^2-x^2= \Delta x(\Delta x + 2x));と与えられます。これは数式を変化させただけですから、自明だと思われます。
次に Δy/Δx を求めてみましょう。明らかに &mimetex(\frac{\Delta y}{\Delta x} = 2x + \Delta x); です。これは何を意味する式なのでしょうか。
もし仮に、Δx が微細であるとき、つまり変数 x の変化量が僅かであるならば、Δx は 0 に近似します。つまり Δy/Δx = 2x という近似式が得られるのです。微分法とは、「ある変数の変化量が微少変化であるとき、その変数で定義される函数の変化量は幾らか」を求めるものなのです。
連続したグラフ上の二点間を結んだ直線の傾きは、その二点間の平均変化量(Δy/Δx)を表しています。グラフP の場合で、その事実を確認してみて下さい。x が 1から3に変化したとき、平均変化量 4(=9-1/3-1)は、たしかにx=1とx=3の二点間を結んだ直線の傾きとなります。このことはとても重要な事実です。
変化前の点を点S、変化後の点を点Tとしましょう。先程の Δx が微小変化量であるときの仮定は、グラフ上の二点すなはち点Sと点Tが近接することを表します。つまり点Sが点Tに一致すると看做せる事から、「近接二点S-T間の平均変化量(Δy/Δx)は、点S(=点T)における接線の傾きである」と看做すことができます。
譬えば P の場合、Δy/Δx = 2x という近似式が求まりましたが、この式に点S の x 成分の値を代入すると、点Sにおける接線の傾きが求まります。次節からはこの事に関して、より詳細な検討を始めます。また以上の説明はだいたい教科書に載っているような説明の抜萃であって、詳細は、そういう書籍を参考にしてください。
微分とは微分係数や導函数を導出することを謂う。
#mimetex(\lim_{x \to a} \frac{f(x)-f(a)}{x-a} = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h} = f'(a));
函数 f(x) において上の極限が存在するとき、「f(x)は x=a で微分可能である」と謂い、極限を f'(a) と書き表してこれを「x=a における微分係数」と謂う。微分可能な区間が実数全域に跨がることは、数多く存在する函数からみると稀であって、だからこういうややこしい言い方をする。
#mimetex(f'_+(a) = \lim_{h \to +0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h});
#mimetex(f'_-(a) = \lim_{h \to -0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h});
更にまた y = 1/x などは、x=0 の前後では全く異なる値を取っている。この前後はデカルト平面におけるグラフでみるとx=0の左右にわかれる。だからx=aの微分係数を、左側微分係数 &mimetex(f'_-(a)); と右側微分係数 &mimetex(f'_+(a)); と呼び分けて考える。左右の微分係数が一致する区間における函数は「連続である」と謂い、微分可能である。譬えば &mimetex(f'_-(a) = f'_+(a)); とならないと、x=a における微分係数 &mimetex(f'(a)); は、どちらの値を採用すればいいのかわからなくなるでしょ?
つまり函数が連続でなければ、接線の傾きや平均変化量と謂った数値も求まらないわけで、その区間で微分はできません。ただし函数が連続であっても、必ずしも微分できるわけでもありません。
#mimetex(\lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} = f'(x));
微分可能な函数の微分係数を、微分した変数で表すことができる場合があります。この函数を導函数と謂います。明らかに連続な函数の場合、上の極限によって導函数が求まります。
また、さっきまでΔで表してた表記を、数学における微分法では d で表記します。y=f(x) の導函数は &mimetex(f'(x) =\frac{dy}{dx}= \frac{d}{dx} f(x)); といった具合で、dy/dx なら「yをxで微分する」という意味になります。ライプニッツの考案した表記法でとても便利。
手始めに三次方程式までの導函数を考えてみましょう。言うまでもありませんが、定数項は変数に対する変化率 0 なので、定数項の導函数は 0 です。
#mimetex((const)' = 0, \ (x)' = \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)-(x)}{h} = 1);
一次の場合は簡単ですね。
#mimetex((x^2)' = \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)^2-(x)^2}{h} \lim_{h \to 0} \{2x + h\} = 2x);
二次も簡単でした。勘のいい人は何か感づいて居られるかもしれませんが、三次の場合もみてみましょう。
#mimetex((x^3)' = \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)^3-(x)^3}{h} \lim_{h \to 0} \{3x^2 + 3xh + h^2\} = 3x^2);
三次も簡単でしたね。つまりn次な方程式は、n-1次な導函数になるわけです。実のところ、これは二項定理から明らかです。
#mimetex*1;
x+h の n乗を展開してみると、二項定理から上式に変形できます。R(x)はxの適当な函数です。これを導函数の定義に当て嵌めてみると、
#mimetex((x^n)' = \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)^n-(x)^n}{h} = \lim_{h \to 0} \{nx^{n-1} + h \cdot R(x)\} = nx^{n-1});
n が自然数の時の n 次方程式が、どのような導函数をとるかということは、以上のことから求まりました。実数域に及ぶ證明は、「n次方程式」を参照して下さい。
#mimetex(y = f(u),\ u = g(x),\ \frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx}\\\{f(g(x))\}' = f'(g(x))\cdot g'(x)\\ (u^n)' = nu^{n-1}\cdot u');
なんだこれ第一弾。ようこそ微分方程式の世界へ。初めて見たときは、おそらく意味がわからないと思われるので、例題を解いて考えてみて欲しい。
證明:&mimetex(\frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx});
増分をΔx、Δy、Δu とおく方式をとりましょう。定義から &mimetex(\frac{dy}{dx}=\lim_{\Delta x \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x} = \lim_{\Delta x \to 0}(\frac{\Delta y}{\Delta u} \cdot \frac{\Delta u}{\Delta x})); とできます。
u は x の函数ですから、&mimetex(\Delta x \mapsto 0); の時 &mimetex(\Delta u \mapsto 0);が成立します。従って、&mimetex(\frac{dy}{dx}=\lim_{\Delta u \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta u} \cdot \lim_{\Delta x \to 0}\frac{\Delta u}{\Delta x} = \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx}); が成立します。
応用例題:&mimetex(y = f(u),\ u = g(x)); はおのおの u の函数・x の函数として無限回微分できる。
この時、合成函数 &mimetex(y = f(g(x))); が、微分方程式 &mimetex(\frac{d^2y}{dx^2} = \frac{d^2y}{du^2}(\frac{du}{dx})^2 + \frac{dy}{du} \cdot \frac{d^2u}{dx^2}); を満たすことを證明せよ。
この例題は、初学者にとってはかなりむづかしいので、「多変数函数」まで読んでから戻ってきて下さい。
#mimetex(\frac{dy}{dx} = \frac{1}{\frac{dx}{dy}});
わけのわからん数式を書き換えただけじゃないかと謗らないで欲しい。この変換はとても重要なわけでして。これが成立することは、「微分法とは」あたりから「d」の意味をじっくり理解していただくと、よくわかると惟う。
例題:&mimetex(y=\sqrt[4]{x}); を微分せよ。
&mimetex(y^4=x); なので、x を y で微分すると、&mimetex(\frac{dx}{dy} = 4y^3); が得られる。従って、&mimetex(\frac{dy}{dx} = \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = \frac{1}{4y^3} = \frac{1}{4\sqrt[4]{x^3}}); となる。
#mimetex(\{kf(x)+lg(x)\}' = kf'(x)+lg'(x)\\ \{f(x)\cdot g(x)\}' = f'(x)\cdot g(x) + f(x)\cdot g'(x)\\ \{\frac{f(x)}{g(x)}\}' = \frac{f'(x)\cdot g(x) - f(x)\cdot g'(x)}{\{g(x)\}^2});
分数函数の導函数は、函数の積の導函数から導くこともできる。
#mimetex(\{\frac{1}{f(x)}\}' = \frac{-f'(x)}{\{f(x)\}^2});
分子が 1 や定数になる場合の導函数も憶えておくと便利。この場合は上の分数函数の性質から導函数が得られる。
#mimetex(\frac{d^ny}{dx^n},\ f^{(n)}(x));
導函数が更にまた導函数を持つことがある。導函数を導いた函数から数えて、一次導函数、二次導函数など謂う。その表記法は、n次導函数の場合、上式の通りとなる。次数が小さい内は &mimetex(f,\ f'); などの表記も用いられる。
#mimetex(x = f(t),\ y = g(t),\ \frac{dy}{dx}=\frac{dy}{dt}\cdot\frac{dt}{dx}=\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}} =\frac{g'(t)}{f'(t)});
「合成函数」「逆函数」で得られた事項を整理すると、媒介変数の関係が満たされるであろうことがわかります。このように媒介変数で表された函数の導函数は、媒介変数に関する導函数を用いて算出できます。つまり導函数も媒介変数で表されるのです。
例題:媒介変数 t が&mimetex(x = 2t + 1,\ y = t^2);を満たす。yのxに関する導函数を媒介変数 t で求めよ。
恐らくは &mimetex(\frac{dy}{dt} = 2t,\ \frac{dx}{dt} = 2,\ \frac{dy}{dx} = t); と簡単に求まると思います。
#mimetex(F(x,y) = f(x) + g(y),\ \frac{d}{dx}F(x,y) = f'(x) + \frac{dy}{dx}g'(y));
多変数函数F(x,y)をxで微分するにはどうすればよいか。上の例は一例に過ぎない。F(x,y)=f(x)g(y)などの表現もあり得るが、合成函数の導函数などを思いだせば、むづかしいわけではない。
例題:双曲線函数 &mimetex(x^2-y^2=1); における、yのxに関する導函数を求めよ。
&mimetex(\frac{d}{dx}y^2 = 2y\cdot\frac{dy}{dx}); なので、&mimetex(2x - 2y\cdot\frac{dy}{dx} = 0 \ \Leftrightarrow\ \frac{dy}{dx} = \frac{x}{y}\ (y \neq 0)); と求められる。
例題:函数 &mimetex(xy=1); (x,y は正)における、yのxに関する導函数を求めよ。
y=1/x としてもいいけれど、ここでは &mimetex(\frac{d}{dx}(xy) = x(\frac{d}{dx}y) + (\frac{d}{dx}x)y = x\cdot\frac{dy}{dx} + y); で解く。整理すると &mimetex(\frac{dy}{dx} = -\frac{y}{x} = -\frac{1}{x^2}); となる。
#mimetex((x^n)' = n\cdot x^{n-1});
n が負の場合は「導函数の性質」での分数函数の導函数から、結局は n が正の場合の導函数に帰着する(證明割愛)。「逆函数」でやった例題から、n が有理数の場合は成立しそうな気配がある(同上)。では、n が無理数だとどうだろうか。無理数でも成立すれば、全実数域で導函数が求まるであろう。
この全実数域での證明には「対数微分法」を利用する(後述を参照)と以外にも簡単に処理できる。
例題:y,x,n が実数の時、&mimetex(y = x^n); を微分せよ。
#mimetex(y = x^n\\ \log y = n\cdot \log x \\ \frac{y'}{y}=\frac{n}{x} \ \Leftrightarrow\ y' = n\cdot x^{n-1}\ (= n\frac{y}{x}));
これにて「xを底とした実数乗な函数」における導函数の公式が證明されました。
#mimetex(\{(ax + b)^n\}' = an(ax + b)^{n-1});
それから数学Ⅱだと発展的な内容とされる上式も憶えておくとよいでしょう。この式は「合成函数」の微分から求まりますが、残念ながら、数学Ⅱでは合成函数を扱わないんですねえ。まあ自然に憶えちゃう式ですな。
#mimetex*2;
「導函数の性質」で述べたことから、正接 tan x の證明は、正弦と余弦のそれを以て代えさせていただきます。
#mimetex(\sin (x+h) - \sin x = \sin x(\cos h - 1) + \cos x\sin h);
加法定理から上式が得られるので、導函数の定義を利用すると、
#mimetex(\lim_{h \to 0}\frac{\sin (x+h) - \sin x}{h}= \lim_{h \to 0}\frac{\sin x(\cos h - 1) + \cos x\sin h}{h}=\cos x\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=\cos x\\ \therefore (\sin x)' = \cos x);
同様にして、
#mimetex(\cos (x+h) - \cos x = \cos x(\cos h - 1) - \sin x\sin h,\\\lim_{h \to 0}\frac{\cos (x+h) - \cos x}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{\cos x(\cos h - 1) - \sin x\sin h}{h}=-\sin x\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=-\sin x \\ \therefore (\cos x)' = -\sin x);
この程度のことは極限が整理できれば簡単でありますな。ついでこれらの性質から、余接、正割・余割、の導函数も導出できる。
#mimetex((\cot x)' = -\frac{1}{\sin^2 x}\ \ \{= -\csc^2 x = -(1 + \cot^2 x)\}\\ (\sec x)' = \frac{\sin x}{\cos^2 x}\\ (\csc x)' = -\frac{\cos x}{\sin^2 x});
なんとなく周期性があるわけですね。これらの事は、数学的にも物理的にも重要なことです。それから、正矢・余矢は正弦・余弦を1から引いたものなので、いちいち書くまでもないでしょう。
#mimetex((\log |x|)' = \frac{1}{x},\ (\log_{a} |x|)' = \frac{1}{x\log a}\\ (e^x)'=e^x,\ (a^x)'=a^x\log a);
#mimetex(y-f(a)=f'(a)(x-a)\\y-f(a)=-\frac{1}{f'(a)}(x-a));
ここまで計算が中心だったけど、そろそろ微分の強みというか、利用法が出てくる。その一つが接線の傾き。
函数 f(x) の微分可能な区間における接線は、x = a において、f'(a) の傾きを持つ。これは「微分法の利用」をよく読めばわかること。次にこの接線は (x,y)=(a,f(a)) を通る。この條件を利用すると、接線の方程式を一般化できる。
法線は接線と直交する直線。直角に交叉する直線同士の場合、それらの傾きの積が -1 になることは学習済であるから、接線と同様に、法線の方程式を一般化できる。
閉区間[a,b]で微分可能な函数 f(x)、g(x)と、a < c < b な c がさまざまな平均値の関係を満たす。これもまた微分の強み、なんだな。
#mimetex(\frac{f(b) - f(a)}{b-a} = f'(c));
#mimetex(\frac{f(b) - f(a)}{b-a} = f'(c)\ \ if\ f(b) - f(a) = 0,\ f'(c) = 0); ラグランジュの定理の特殊解。
#mimetex(\frac{f(b) - f(a)}{g(b)-g(a)} = \frac{f'(c)}{g'(c)}); ラグランジュの定理の一般解(g(x)=x)。
高校では習わない表現と分野。それでもやはり「対数微分法」「近似式(註:これは範囲内)」「速度」「凹凸」は見ておいて欲しい。
対数函数は解析函数とか呼ばれてるそうですが、大変便利な奴です。
例題:&mimetex(y=\sqrt[3]{\frac{(x+2)^4}{x^2(x^2+1)}}); を微分せよ。
力技で解くと絶対に計算ミスをしそうですな。そこで対数微分法の出番です。
補題:&mimetex(\log |y|); を x で微分し、例題の函数を対数函数で表せ。
#mimetex(\frac{d}{dx}\log |y|=\frac{d}{dy}\frac{dy}{dx}\log |y| = \frac{dy}{dx}\frac{1}{y} = \frac{y'}{y});
#mimetex(\log y=\frac{4\log|x+2| - 2\log|x| - \log(x^2+1)}{3});
補題は簡単です。後はこれを組み合わせて例題を解きます。つまり対数函数で整理した式の両辺を x で微分してやって、最後に導函数を導くという寸法。
#mimetex(\log y=\frac{4\log|x+2| - 2\log|x| - \log(x^2+1)}{3}\\ \ \ \ \ \frac{y'}{y} = \frac{d}{dx} \frac{4\log|x+2| - 2\log|x| - \log(x^2+1)}{3}\\ \ \ \ y' = \frac{y}{3}(\frac{4}{x+2} - \frac{2}{x} - \frac{2x}{x^2+1})\\ \ \ \ \ \ \ = -\frac{2(4x^2-x+2)}{3x(x^2+1)} \sqrt[3]{\frac{x+2}{x^2(x^2+1)}});
多くの場合、真数条件に拘う必要はありません。対数微分法は冪乗や根や分数の函数の導函数を処理するのに最適となります。この解法を対数微分法と謂います。
#mimetex(\vec{v} = \frac{d}{dt}\vec{p},\ \vec{a} = \frac{d}{dt}\vec{v} = \frac{d^2}{dt^2}\vec{p});
計算するうちに気づくことだけど、三次近似式、四次近似式が得られそうな気配がある。これはテイラー展開等に繫がる考えであって、重要な著想であると云えよう。
凸函数と呼ばれる物がある。任意の二点を結ぶと領域内に収まる物を凸函数と謂う。橢円函数なんかの閉曲線が典型だね(例:ドーナツ型の閉曲線ではこれを満たさないので凸函数ではない)。抛物線で「上に凸」だとか「下に凸」というのは、y=f(x) で表される抛物線がy > 0 領域で凸函数なのかy < 0 領域で凸函数なのか、これを表すともとれる。
こう考えてみると、凹凸が違った物にみえてこないでしょうか。「凸聚合」「凹函数」などに興味があれば、どうぞ。イェンゼンの不等式に相加平均、相乗平均、調和平均とかナ。
註:問題が無い限り積分定数は C で統一する。C は任意の値であって、式の前後で必ずしも一致しない。
例題:不定積分 &mimetex(\int x^2\sin x\, dx); を解け。
微分にもまして積分では技巧的になる。まづ知らないとすぐには解けない。置換積分法、部分積分法、区分求積法(後述)はその尤も基礎的なテクニックであるが、これも万能ではない(「微分方程式の解法」参照)。積分できる函数は限られる傾向がある。
応用例題:不定積分 &mimetex(\int \frac{1}{\sqrt{x^2 + a}}\, dx); を解け。
五分とか十分程度でいいから、今までやってきた知識を使って、解法を試みて欲しい。見た所解けそうであるが、解くに解けない事に気づかれることだろう。その解答は本節の最後に掲載することにする。
例題:&mimetex(\int \frac{dx}{1+\sin x} = \int \frac{1 - \sin x}{\cos^2 x}\, dx = \tan x + \int \frac{(\cos x)'}{\cos^2 x}\, dx = \tan x - \frac{1}{\cos x} + C); が成立。「円函数の整理」「合成函数」等を利用。
例題:&mimetex(\int \log x\, dx = \int (x)'\cdot\log x\, dx = x(\log x - 1) + C); が成立。「部分積分法」の典型の一つ。
なかなか解けたものではない事に気づかれる筈。慣れるしかない。算数ドリルみたいに適当な問題集の問題で、数学的計算力に磨きを書けないと、すぐに解けなくなってしまうから頑張らないといけない。だいたいこんなのは序の口に過ぎない。
例題:不定積分 &mimetex(I = \int e^x\sin x\, dx,\ J = \int e^x\cos x\, dx); を夫々求めよ。
似たような問題を「部分積分法」で提示したが、こちらは消える函数がない。しかし周期性がある。「部分積分法」を利用すると、
#mimetex(I = e^x\sin x - J,\ J = e^x\cos x + I\\ \therefore I + J = e^x\sin x, -I + J = e^x\cos x);
が成立するので、これを解いてやると、不定積分が得られる。
#mimetex(I = \frac{1}{2}e^x(\sin x - \cos x) + C,\\ J = \frac{1}{2}e^x(\sin x + \cos x) + C);
勿論、二回部分積分を繰り返しても同じ結果になるのは明らかである。